
飼い主さまが行う義務または推奨される事柄
検便
犬や猫を飼い始めたら検便をしましょう。ペットショップやブリーダーなど犬が集まる場所から寄生虫などを家の中に持ち込んでしまう可能性があるのです。飼い初めにはペットにかかるストレスから下痢をする子が多くなります。子犬や子猫の下痢の原因の一つにジアルジア症があります。通常の検便で分かりにくいこともありますので、下痢が続いている時にはジアルジアの抗原検査をお勧めします。
不妊・去勢手術によって予防できる病気
犬や猫は生後約6カ月で性成熟すると言われています。性成熟に伴い家庭内で暮らしていくには不都合な問題行動が出てくることがあります。オスならなわばり意識が旺盛になり、おしっこを高い所にかけるマーキングを行ったり、ほかの犬とケンカをしたり。自分が家族の中のリーダーだと思うと誰の言うことも聞かなくなったり。メスなら発情期に脱走したり、その結果望まない妊娠・出産の可能性も否定できません。
- メスの場合
- 乳腺腫瘍
- 生殖系腫瘍
- 子宮蓄膿症
- 卵巣腫瘍
- オスの場合
- 精巣腫瘍
- 肛門周囲腺腫
- 前立腺肥大
- 会陰ヘルニア
そうしたトラブルや病気を防ぎ、健康で一生を過ごさせるためにも、適切な時期に去勢・不妊手術を行いましょう。時期を逃すと問題行動を改善できないことがあります。実施時期については院長にご相談ください。また、去勢・不妊手術を行うことで、中高齢期に発生するホルモンが関連した病気の予防効果も期待できます。なお、手術は全身麻酔下で行いますので、麻酔や手術自体のリスクを含め事前に詳しくご説明します。
犬の場合、メスは手術後2泊、オスは1泊の入院が必要です。猫では、メスは1泊、オスは日帰り(当日夕方)となります。手術後、多くの場合、太りやすくなるという症状が認められますので、飼い主さまによる適切な食事と運動のコントロールが必要になります。
狂犬病予防
狂犬病ウイルスによる感染症で、犬はもちろん、人やすべての哺乳類に感染する人獣共通感染症です。多くは犬などの感染動物に咬まれたことで伝染しますが、発症すると有効な治療法はなく、100%死に至る怖い病気です。そこで、日本では法制化して犬の登録とワクチン接種を義務化したため、現在、狂犬病を清浄化できた世界でも数少ない国となっています。世界各地で毎年およそ55,000人が狂犬病で亡くなっており、日本は水際で防いでいる状態なのです。
日本での予防接種率が下がると、いったん国内で感染が起きれば一気に日本中に広がるリスクが想定されています。愛犬が人を咬んでしまった場合には狂犬病予防接種をしていたかが非常に問題になります。ご自身の身を守るためにも狂犬病ワクチンは必須といえるでしょう。
ただし、病気やアレルギー、高齢など、愛犬に健康の不安がある場合には、獣医師の判断により猶予の証明を出すことが可能ですので事前に当院までご相談ください。
予防接種の実施を当院でご希望の際、役所からの「狂犬病予防接種注射のお知らせ」ハガキをお持ちください。当院にて注射済票の発行をいたします。初めての接種の場合は、犬の登録と鑑札の発行も致します。横浜市以外に在住の方は、予防接種証明書を発行しますので、居住地の役所にてお手続きください。
フィラリア予防
蚊に刺されることで犬糸状虫(フィラリア)が感染します。体内に入り込んだ幼虫が成長して心臓や隣接血管に寄生します。重症化すると命に関わる感染症です。数十年前までは、多くの外飼いの犬がフィラリアで亡くなりました。現在では、予防薬を定期的に正しく投与する予防が奏功して病気自体は減っていますが、予防をしていなかったことで感染するリスクがあるのです。
蚊を媒介とする病気なので、予防は蚊の活動期間に合わせて行います。ただし、蚊に刺されなくなる薬ではなく、蚊から感染した幼虫が育つ前に毎月駆虫する予防法です。成長した虫は駆虫できないため毎月欠かさず投薬することが大切です。横浜での予防期間は、蚊が出始めた翌月の5月に開始し、蚊がいなくなる11月の翌月の12月までを実施期間とするのが基本です。気候温暖化により、蚊も活動期間が長くなっていますので、最近は1年中予防を行う「通年予防」も推奨されています。
なお、フィラリア予防を始める前には必ず獣医師によるフィラリア検査(血液検査)を受け、フィラリアに感染していないことを確認することが求められます。というのも、万が一感染していた場合、それに気づかずに投薬予防を行うと、血液中に存在するミクロフィラリアが一気に死滅することにより、犬もショックを起こし、死亡に至るリスクがあるからです。フィラリア予防薬には、現在、ノミ・マダニ、消化管寄生虫も一緒に駆除できるご褒美タイプのチュアブル錠やフレーバー錠が人気です。口から与えるのが苦手な子には首筋に滴下するスポットタイプがあります。投薬パターンや薬のタイプについては、ご相談ください。
ノミ・ダニ予防
犬や猫に寄生するノミやマダニ。ノミは他の動物から飛び移って来ますので、公園などで他の動物と接する機会がある場合には予防が推奨されます。マダニは草むらで動物が通りかかるのを待ち構えています。どちらも血を吸われて痒いだけでなく、さまざまな病気の病原体を媒介することもわかっています。ノミからサナダムシ(瓜実条虫)に感染したり、マダニからSFTSウイルスに感染するリスクがあります。マダニから感染したSFTSウイルスにより毎年人が亡くなっていますので、ペットから人への感染を防ぐ意味でもペットへのノミ・マダニ予防は重要です。
なお、ペットの体表にマダニがいるのを見つけても手でつぶしたり引っぱったりするのは禁物です。無理に引きちぎるとマダニのアゴの部分が皮膚に残り、化膿することがあります。マダニの体をつまむことでマダニが媒介している病原体をペットの体内に注入してしまうリスクもあるのです。マダニを見つけたら、そのまま来院して駆除しましょう。
混合ワクチン接種
犬や猫のウイルス感染症を数種類まとめた予防接種で、これも1年に1回接種します。狂犬病のように義務ではありませんが、実際にかかるリスクの高い病気はこちらのワクチンで予防できます。仔犬では複数回行いますが、成犬になったら1年に1回の接種で有効な免疫が保てます。特に高齢犬になると免疫力が低下するので、ワクチン接種はさらに重要です。
ワクチンは混合されている種類により、当院では犬には5種と7種、猫には3種を用意しています。5種混合ワクチンはどのようなライフスタイルでも推奨されているコアワクチンと呼ばれるものです。7種混合ワクチンにはレプトスピラ病が追加されており、旅行に連れていくことがある場合や、アウトドアに遊びに行く犬にお勧めです。猫の場合、多頭飼いや、家の外にも出る場合には感染リスクがより高くなります。ペットのライフスタイルや状況に応じて感染のリスクを考慮して飼い主さまにお選びいただきます。
注射後は免疫反応で発熱したり、アレルギー反応が出ることもあるので、安静にして過ごし、様子をよく観察してください。なにか異変がありましたら早めにご連絡ください。アレルギー体質や以前のワクチン接種で不調がある場合には、事前にお知らせください。
犬5種・7種混合ワクチン
年1回の接種で伝染病予防をします。初年度には複数回の接種が必要となります。
ライフスタイルに合わせて5種と7種からお選びいただけます。アウトドアで過ごす等活発な犬種には、7種をオススメしています。
猫3種混合ワクチン
年1回の接種で伝染病予防をします。初年度には複数回の接種が必要です。
皮膚の病気
最近では、アレルギーやアトピー性皮膚炎を発症する動物たちも増えています。春には花粉症で来院する子も。かゆみは強いストレスであるとともに、かきこわしてしまうこともあるので、痒みを取ってあげることが大切です。痒みの原因一つではなく複合していることが多いことで診断を難しくしています。
アトピー性皮膚炎は体質的な問題であり完治が難しいものです。痒みの原因になりそうな要因は排除し、かゆみ止めやスキンケア、食事療法などにより、その子にとってストレスを感じない程度まで痒みを軽減し、痒みと共存していくことが治療のゴールとなります。
目の病気のために
目が赤い、目やにが出る、目をしょぼしょぼさせている、目が白っぽくなってきたなど、涙焼けが気になるなど、目に関する症状も普段の生活の中で気づいたらすぐにご相談ください。
目薬の正しいさし方がわからないという飼い主さまには、犬も安心のさし方をレクチャーします。また、軟膏タイプの薬も用意があります。より専門的な治療が必要であると判断した場合には、二次診療の動物眼科専門病院をご紹介します。