当院のターミナルケアの考え方
かかりつけの動物病院で「これ以上の治療法はありません」と告げられたとき、多くの飼い主さまは深い悲しみと、「この子のために、まだ何かできることはないのか」という切実な思いを抱えてご相談にいらっしゃいます。
当院がまずお伝えしたいのは、根治を目指す治療が難しくなった段階は、決して医療の終わりではないということです。そこからは、痛みや苦しみを取り除き、その子らしい穏やかな時間を守るための医療、すなわち緩和ケア・ターミナルケアが始まります。
当院は開院以来、進行したがんの子について次のように考えてきました。
遠隔転移の認められる進行したがんの場合には、完治を目指そうとするとかえって患者を弱らせてしまうことになりかねません。患者のQOL(生活の質)の維持を第一に考え、がんとの上手な共存を目指します。
治療困難ながんについては二次診療施設と連携して治療を行うほか、飼い主さまのご希望によっては、ご自宅で過ごしながらのターミナルケアを行っています。
「延命治療」「緩和ケア」「ターミナルケア」の違い
混同されやすい三つの言葉を整理します。
延命治療は、病気そのものに働きかけて命の時間を延ばすことを目的とした治療です。
緩和ケアは、病気を治すことではなく、痛みや吐き気、呼吸の苦しさといったつらい症状を和らげ、QOL(生活の質)を維持・向上させることを目的とした医療です。終末期に限ったものではなく、がんや慢性疾患と診断された早い段階から、治療と並行して始めることができます。
ターミナルケアは、緩和ケアのなかでも特に生命の最終段階において、延命よりも苦痛の除去と穏やかな時間に重点を置いたケアを指します。
大切なのは、緩和ケア・ターミナルケアを選ぶことは「何もしない」ことでも「見捨てる」ことでもなく、その子の残された時間の質を高めるための、積極的な医療の選択だということです。
実際に当院では、こうした選択をされたご家族と一緒に治療を組み立ててきました。骨の病変による強い痛みで立ち上がれなくなった15歳のラブラドール・レトリーバーは、飼い主さまが断脚ではなく痛みの緩和ケアを希望され、痛みの改善を目的とした治療により再び歩けるようになりました。口の中に大きな腫瘍ができた13歳のミニチュアダックスは、「残りの期間を痛みや苦しみなく生きて欲しい」というご希望を受け、副作用の少ない選択肢から順に試し、最終的に腫瘍が外見上わからないほど縮小しました。
当院では、延命治療とケアのどちらか一方を迫ることはありません。その子の状態とご家族のお気持ちに合わせて、両者のバランスを一緒に考えていきます。
当院のターミナルケア 三つの柱
1.なぜ、腫瘍科の獣医師がターミナルケアを行うのか
「がんの専門家が、なぜターミナルケアなのか」と思われるかもしれません。しかし実は、この二つは切り離せない関係にあります。
犬の死因の第1位はがんであり、いまや犬でも3頭に1頭がかかるといわれています。終末期を迎える子の多くは、がんの末期にある子たちです。がんがこれからどのように進行し、どんな症状が、どのタイミングで現れるのか。それを見通せるからこそ、症状が現れる前に先回りしたケアを組み立て、ご家族に「これから起こること」を事前にお伝えし、慌てずに備えていただくことができます。
院長は、日本獣医がん学会の獣医腫瘍科認定医Ⅱ種を取得しています。加えて、現在の日本獣医がん学会の前身である「日本獣医がん研究会」時代からの立ち上げメンバーの一人として、日本の獣医がん医療の創成期からペットのがん治療に携わってまいりました。現在も毎年2回のがん学会に参加し、最新の知見を更新し続けています。
終末期のケアは、その日から始まるものではありません。診断の日から、治療の日々を経て、最終章まで。同じ獣医師が一貫して伴走できることに、意味があると考えています。
2.医療用麻薬を含む、切れ目のない痛みの管理
院長は、重度な痛みに対応するための麻薬施用者免許を取得しており、モルヒネ注射やフェンタニルパッチなどにより効果的な鎮痛を実施しています。終末期の強い痛みは、一般的な鎮痛薬だけではコントロールが難しい場合があります。痛みの強さに応じて、非ステロイド系消炎鎮痛剤から医療用麻薬まで段階的に選択できる体制は、「痛みを我慢させない時間」を守るための当院の柱のひとつです。
さらに近年は、1回の注射で1か月間痛みを緩和する抗体医薬を導入しています。痛みにターゲットを絞って効果を発揮するため副作用が出にくく、長期間の鎮痛剤投与による腎障害や胃潰瘍のリスクが問題となる高齢の子にも使いやすい治療法です。犬用も猫用もあり、承認されている効能は関節炎の痛みですが、がんの鎮痛や猫の難治性口内炎の鎮痛にも、効能外の使用として選択できます。
3.「入院させない。自宅でいつも通りに」
当院がターミナルケアで最も大切にしているのは、次の考え方です。
最終的に目指すべきは、入院で時間を浪費することよりも、がんの犬や猫ができるだけ副作用を出さずに、自宅で飼い主さまと一緒にいつも通りに暮らせることだと当院では考えています。家族ともに、いつもと同じような生活が送れるようにサポートすることで患者の免疫力が上がり、寿命が延びる可能性が見込める点を重視しているからです。
これは終末期に限った話ではありません。抗がん剤治療の段階から、当院は「軽めの薬から始めて、副作用が出なければ段階を上げる」というオーダーメイドのやり方を取ってきました。入院で時間を使わせないこと、その子の日常を壊さないこと。この一貫した考え方が、そのまま終末期のケアにつながっています。
長く通院していただいている子で、病状が進んで来院そのものが難しくなった場合には、診療後の時間帯などに往診へ伺うことがあります。また、寝たきりになった子には、症状に合わせた環境づくり、介護用品の選択、ご自宅でできる応急処置まで、ご家族と相談しながらその子に最適な方法を一緒に考えます。
院長の愛猫ロデム、21歳。
私たちも同じ毎日を過ごしています
当院が開院以来ずっと大切にしてきたのは、「自分が飼っている犬や猫=家族ならどうするか」という視点です。
院長の愛猫ロデムは、2026年7月で21歳になりました。当院のブログには、ロデムが年を重ねていく様子が10年以上にわたって記録されています。ここに書かれているのは、高齢の子と暮らすご家族なら、きっと覚えのある光景ばかりです。
18歳のとき。 耳が遠くなり、近づいても目の前に行くまでグーグー寝ています。自分でグルーミングをしなくなったので、毎日コロコロと粘着テープで抜け毛を取ってあげるのが日課になりました。気持ちいいのか、途中でやめると「もっとコロコロしろ」と催促されます。おそらく腎機能が落ちているだろうと、水分補給を心がけるようになりました。洗面台に行くと飛び乗ってきて「水をちょろちょろ出せ」と言われます。足腰も弱くなり、階段を上るときには前足をかばうようになりました。
19歳のとき。 耳はもう聞こえていないようです。階段の上り下りはヒョコヒョコと一歩ずつ。運動のために高い所に設置したエサ台には飛び乗れなくなり、手前に中継地点の椅子を置きましたが、それでも躊躇するようになりました。そこで、1か月効く鎮痛の注射をもう一度試したところ、劇的な改善が見られました。気がつくとヒョイっと一気に高台に飛び乗っています。
20歳のとき。 時々急に食べなくなったりして、慌てて点滴をしたり。何とか頑張っています。誕生日には鎮痛の注射をして、大好きなフードを色々買いそろえました。
そして21歳の今も、月に1回の注射を続けています。
高齢の消炎鎮痛剤の連用は、胃を荒らしたり腎臓の負担になったりします。ロデムに使っているのは、痛みだけにターゲットを絞った抗体医薬です。副作用を心配せずに使えるから、老猫にも安心して続けられる。当院がこの治療法をお勧めしているのは、院長が自分の猫でその効果を確かめているからです。
食べない日に点滴をするか、しばらく様子を見るか。痛み止めを足すべきか、まだ早いか。ご相談にいらっしゃるご家族が悩まれることは、私たちが自分の家で毎日悩んでいることでもあります。教科書どおりの正解をお伝えするのではなく、同じ立場で一緒に考えられること。それが、当院がターミナルケアで最もお役に立てる部分だと思っています。
こんなサインが見られたらご相談ください
ターミナルケアや緩和ケアのご相談は、「もう本当に最期が近い」と感じてからでは遅すぎることがあります。以下のようなサインが見られたら、まだ元気が残っている段階でも、一度ご相談いただくことをお勧めします。早めにご相談いただくことで、痛みや不快感の少ない時間をより長く確保することができるからです。
痛みのサイン
動物は本能的に痛みを隠します。とくに猫は顕著で、1歳以上の猫の約74%、12歳を超えると約90%が変形性関節症の痛みを抱えているといわれますが、飼い主さまが気づきにくいのが実情です。
「キャンと鳴く」「痛がって暴れる」といったわかりやすいサインが出る頃には、すでに強い痛みを抱えていることが少なくありません。次のような行動の変化に注意してください。
- ベッドの上でじっと動かない、部屋の隅や家具の下に隠れるようになった
- 抱き上げようとすると嫌がる、触られるのを避ける
- 目を細めてうずくまっている
- 立ち上がる動作がゆっくりになった、動作がぎこちない
- 階段が苦手になった、ジャンプをしなくなった
- (猫)高い所に登らなくなった、毛づくろいをしなくなって毛並みが悪い
呼吸のサイン
安静にしているのに呼吸が速い、お腹を大きく使って苦しそうに呼吸をする、舌の色が悪い、横になれずに座ったまま眠ろうとする。これらは肺炎や肺水腫、胸水の貯留などによる呼吸困難のサインであり、早急な対応が必要です。
食事・排泄のサイン
大好きだったごはんを残すようになった、水は飲むのに食べない、体重が目に見えて減ってきた、嘔吐や吐き気が続いている、自力で排泄の姿勢がとれなくなった。
生活・行動のサイン
自力で立ち上がれない、寝たきりになった、けいれん発作を起こした、昼夜が逆転してご家族も眠れない。
また、症状に限らず「末期のがんと診断されたが、これからどう過ごさせてあげればよいか分からない」「慢性の病気が進行し、通院がつらそう」といったお悩みのご相談も承っています。かかりつけが他院の場合でも、これまでの検査データをお持ちいただければセカンドオピニオンとして対応いたします。
ターミナルケアにおける検査の考え方
ターミナルケアにおける検査は、病気を「見つける」ためではなく、その子の苦痛の原因を特定し、いま体に何が起きているのかを把握して、最適な緩和手段を選ぶために行います。検査そのものが負担にならないよう、「その検査結果がケアの内容を変えるかどうか」を基準に、必要最小限の項目を選んで実施します。
身体検査・痛みの評価:体重・体温・心拍・呼吸数の測定に加え、姿勢、表情、触診への反応、歩き方などから痛みのレベルを評価します。言葉を話せない動物の痛みを見きわめ、鎮痛薬の種類や量を調整するための最も重要な情報源です。ご自宅での様子(食欲、睡眠、活動量など)の問診も、評価の大切な一部です。
血液検査:腎臓や肝臓の機能、貧血の程度、脱水の状態、炎症の有無などを確認します。鎮痛薬が内臓に負担をかけていないかのチェックにも欠かせません。
超音波(エコー)検査・レントゲン検査:多くの場合、麻酔をかけずに実施できる画像検査です。胸水や腹水の貯留、腫瘍の増大、肺転移の有無、心臓の状態などを確認し、呼吸が苦しい原因の特定に用います。体表のしこりについては、細い針で細胞を採取する細胞診を行い、その場で染色して約15分で判定します。多くの場合、麻酔は必要ありません。
CT・MRI検査:脳・神経系の症状の原因精査や、腫瘍の広がりの詳細な評価が必要な場合には、全身麻酔下でのCT・MRI検査を、麻布大学附属動物病院やペテモどうぶつ医療センター相模原など連携する二次診療施設にご紹介して実施します。受診後は専門医と連携しながら、引き続き当院で診療を継続します。終末期の子に実施すべきかどうかは、得られる情報の価値と体への負担を天秤にかけ、ご家族と十分に相談したうえで判断します。
「検査のための検査」は行いません。あくまでその子の穏やかな時間を守るための情報収集に徹する、というのが当院の考え方です。
終末期に多い病気
犬の場合
犬の死因の第1位はがんです。当院でも、ターミナルケアのご相談で最も多いのはがんの終末期です。
リンパ腫:全身のリンパ節が腫れることもある血液のがんで、抗がん剤治療が第一選択となります。治療がよく効く一方、再発を繰り返して薬剤が効きにくくなった段階では、症状のコントロールを中心としたケアに移行します。
血管肉腫:脾臓などにできることが多く、腫瘍の破裂による腹腔内出血で急変しやすいがんです。急な脱力やぐったりする様子は緊急のサインです。当院でも、脾臓の腫瘤が破裂して腹腔内出血を起こした犬の緊急手術を経験しています。
骨肉腫:大型犬の脚に多い、非常に痛みの強いがんです。医療用麻薬を含む強力な鎮痛管理が欠かせない代表的な疾患です。
このほか、肥満細胞腫、口腔内腫瘍、鼻腔内腫瘍、肺がん、乳腺腫瘍の末期なども、ターミナルケアの対象となります。
がん以外では、心臓病・腎臓病が犬の3大疾病として挙げられます。また、椎間板ヘルニアや重度の関節疾患による寝たきりの介護についても、ご相談を承っています。
猫の場合
猫では、高齢になるにつれて腎臓の機能が落ちていく子が多く、終末期には脱水や食欲不振が大きな課題となります。
がんでは、リンパ腫が猫で最も多い腫瘍です。乳腺腫瘍は猫では悪性の割合が高く、肺転移による呼吸困難が終末期の課題となります。扁平上皮癌(口腔内や顔面)は、食べたくても食べられない痛みを伴うがんであり、強力な鎮痛と、食べられる形での栄養補給の工夫が必要になります。
このほか、心臓病の末期、慢性膵炎や胆管肝炎の末期、高齢猫に多い甲状腺機能亢進症による衰弱なども、ケアの対象となります。当院では19歳の猫の甲状腺機能亢進症で、胸水が大量に貯留した状態から抜去により一命を取り留め、投薬の工夫をご家族と一緒に見つけて元気を取り戻した例も経験しています。
猫は犬以上に痛みや不調を隠す動物です。「トイレ以外で寝てばかりいる」「毛づくろいをしなくなった」「高い所に登らなくなった」「隠れて出てこない」——こうしたささいな変化が、実は終末期のサインであることが少なくありません。また、猫にとって通院はそれ自体が大きなストレスです。当院では、お家以外の場所が苦手なネコちゃんのために予約診療の枠もご用意していますので、ご相談ください。
当院で行うケアの内容
1.痛みの管理
ケアの根幹です。軽度の痛みには非ステロイド系消炎鎮痛剤、痛みの強い場合には複数の鎮痛剤を使用したマルチモーダル鎮痛、重度の痛みには麻薬施用者免許を持つ当院ならではのモルヒネ注射やフェンタニルパッチによる鎮痛を、症状の進行に合わせて提供します。
また、1回の注射で約1か月効果が続く抗体医薬も導入しています。痛みにターゲットを絞るため副作用が出にくく、腎臓や胃腸への負担が心配な高齢の子にも使いやすい治療法です。承認されている効能は関節炎の痛みですが、がんの鎮痛や猫の難治性口内炎の鎮痛にも、効能外の使用として選択できます。
2.呼吸・循環のケア
胸水や腹水が貯留して呼吸が苦しくなっている場合には、状態を見きわめたうえで、貯留した液体を抜くことにより苦しさを和らげることがあります。呼吸の苦しさは動物にとって最もつらい症状のひとつであり、優先して対応します。
3.食事と栄養のケア
食欲が落ちてきた子には、食事を温めて香りを立たせる、高カロリー食に切り替えるなどの工夫をご提案します。自分から食べられない場合には、液状の流動食をシリンジで少量ずつ与える方法をご指導することもあります(誤嚥させないことが重要です)。
口からの摂取が難しい場合には局所麻酔にて鼻カテーテルの設置を行います。
がんの子には、がん細胞が利用しやすい糖や炭水化物を減らし、オメガ3脂肪酸を加えるなど、バランスのとれた栄養管理と療法食の指導を行います。
一方で、強引に食べさせることがストレスになる場合には、無理をさせない選択も尊重します。ご家族と一緒に「その子にとっての幸せ」を基準に判断します。
4.在宅でのケアと往診
寝たきりの子には、症状に合わせた環境づくり、介護用品の選択、ご自宅でできる応急処置まで、ご家族と相談しながらその子に最適な方法を一緒に考えます。ご自宅でのケアの方法は、その子の状態に合わせて具体的にお伝えします。
当院は院内での診療を基本としており、往診のみのご依頼はお受けしておりません。ただし、長く通院していただいている子で、病状が進んで来院が難しくなった場合には、診療後の時間帯や手術のない日中などに、往診に伺うことがあります。通院が負担になってきたと感じられたら、診察の際にご相談ください。
ご相談からケア開始までの流れ
STEP1 ご相談・ご予約
まずはお電話(045-960-0199)、Web予約、または公式LINEからご連絡ください。当院に通院中の方はもちろん、他院にかかりつけがある方のセカンドオピニオンのご相談も承ります。
腫瘍のご相談は、予約診療でお受けしています。お電話にてご予約ください。他の動物がいると緊張してしまう子、お家以外の場所が苦手なネコちゃん、時間のかかる治療やご相談に適した枠です。
「まだ元気だけれど、これからのために話を聞いておきたい」という段階のご相談も歓迎します。
STEP2 初回カウンセリング・状態の評価
これまでの経過や検査データ(他院のものもご持参ください)を拝見しながら、じっくりお話を伺います。そのうえで、身体検査による痛みの評価、必要に応じた血液検査・エコー検査などを行い、いまその子の体で何が起きているのか、これからどんな経過が予想されるのかを、専門用語を避けたわかりやすい言葉でご説明します。
STEP3 ケアプランの決定
評価結果をもとに、痛みの管理の方針、ご自宅で行うケアの内容、通院の頻度、そして費用の見通しを、ご家族と一緒に話し合って決めていきます。
当院が一方的に治療方針を押し付けることはありません。その子の体質・性格・個性、そしてご家族の考え方やライフスタイルはさまざまです。それらに合わせ、治療法の選択や費用、実際の治療に至るまで、院長、スタッフ、飼い主さまとともに適切な方法を考えます。プランは一度決めたら終わりではなく、病状の変化に応じて柔軟に見直します。
STEP4 ケアの開始とご自宅でのサポート
投薬・処置を開始するとともに、ご自宅で実践できるケアを具体的にご指導します。CT検査や当院で実施できない手術が必要と判断される場合には、連携する二次診療施設にご紹介し、受診後は当院で診療を継続します。
夜間・時間外のご連絡について
終末期のご家族が最も不安に感じるのが、夜間や休診日の急変です。当院の体制を正直にお伝えします。
診療時間外は留守番電話になっております。外出先から確認することが可能ですので、メッセージ、お名前、診察券番号、連絡先電話番号をお伝えください。折り返しご連絡します。
ただし、休診日や夜間に連絡のつかない場合、また重症と思われる場合は、救急診療センターをご利用ください。当院での夜間診療は1人での診療となりますので、詳しい検査等は行えません。救急診療センターでの治療内容は翌朝、当院に引き継がれますのでご安心ください。
終末期のケアを始める際には、急変時にどうするかをあらかじめご家族と共有し、慌てずに動けるよう準備しておくことをお勧めしています。
旅立ちが近づいたときに現れる変化
看取りの時が近づくと、犬や猫の体にはいくつかの共通した変化が現れます。これらを事前に知っておくことは、決して怖いことではありません。むしろ「いま何が起きているのか」が分かることで、最期の瞬間にパニックにならず、落ち着いてそばに寄り添うための備えになります。
食事と水分の変化:旅立ちの数日前から、ごはんを食べなくなり、やがて水も飲まなくなることがほとんどです。これは体が栄養や水分を必要としなくなっていく自然な過程であり、無理に食べさせようとすることが、かえって負担になる場合もあります。「食べさせられなかった」とご自身を責める必要はまったくありません。口を湿らせてあげる、好きだった食べ物の香りをそばに置いてあげるだけでも、十分な愛情表現です。
呼吸の変化:呼吸が浅く速くなったり、逆に間隔が不規則に長くなったりします。最期が近づくと、あごを大きく動かして呼吸をする「下顎呼吸」が見られることがあります。苦しそうに見えてご家族には非常につらい時間ですが、この段階では意識レベルが低下しており、本人が感じている苦痛は見た目ほど大きくないと考えられています。事前に知っているだけで、受け止め方は大きく変わります。
体温と意識の変化:体温が下がり、耳や手足の先が冷たく感じられるようになります。呼びかけへの反応が少しずつ薄れ、眠っている時間が長くなります。ただし、聴覚は最期まで残るといわれています。声をかけ、優しく撫でてあげてください。
当院でも、ご自宅で穏やかに息を引き取った子たちを見送ってきました。ある組織球肉腫のバーニーズ・マウンテン・ドッグは、その日も大好きなジャーキーをたくさん食べて落ち着いて過ごし、夜に呼吸が苦しくなったあと、落ち着いて眠りにつき、未明に穏やかに息を引き取りました。治療によって得られた8か月の間に、元気に旅行に行き、ご家族と楽しく過ごした時間は、かけがえのないものだったと思います。
こうした変化が始まったら、診療時間内にご連絡ください。ご自宅で見送りたい場合の過ごし方についても、ご相談に応じます。
ご相談のタイミングと、その前にできること
「まだ早い」と感じる段階が、実はベストタイミングです
緩和ケア・ターミナルケアは、「最期の数日」のための医療ではありません。がんや慢性疾患と診断された比較的早い段階から、治療と並行して痛みや不快感を和らげることで、その子のQOLは大きく変わります。
食欲が落ちてきた、自力で立ち上がるのに時間がかかる、顔つきや歩き方が変わった、好きだった遊びに興味を示さなくなった——こうした変化が見られた時点でご相談いただければ、症状が重くなる前に先手を打つケアが可能です。痛みは、強くなってから抑えるより、強くなる前に抑えるほうがはるかに少ない薬で確実にコントロールできます。
その手前の段階——早期発見が、最終章の質を左右します
終末期を迎えるずっと手前の段階、すなわち病気そのものの早期発見も、結果としてその子の最終章の質を大きく左右します。ここは当院が開院以来力を入れてきた分野です。
がんの半分以上は、外から触ってしこりとして発見できます。日頃のスキンシップで体中を触ってあげることは、大切なコミュニケーションであると同時に、最高のヘルスチェックです。しこりを見つけたら、いつ頃見つけたか、大きくなる速度はどうか、痛みや痒みはあるかを記録し、早めに受診してください。当院では細胞診により、多くの場合15分程度でしこりの正体の見当をつけることができます。
また、犬や猫の時間は人間よりも数倍早く進みます。7歳以上のシニア期には、1年に2回の定期健診が望ましいでしょう。初期のがんでは血液検査に異常が出ることはほとんどないため、レントゲンやエコーなどの画像診断を組み合わせた健診をお勧めします。異常がなかった健診結果も、次回との比較データとして重要な意味を持ちます。
当院は、元気なうちからの健診と、万一のときのターミナルケアまで、その子の一生に切れ目なく伴走するかかりつけ医でありたいと考えています。
▶︎がん専門治療
よくあるご質問
ターミナルケアを選ぶことは、治療を諦めることではないのですか?
決してそうではありません。ターミナルケアは「治すための治療」から「苦痛を取り除き、家族との時間を守るための医療」への切り替えであり、積極的な医療行為です。実際に当院でも、根治を目指す手術を選ばず痛みの緩和を選ばれたことで、再び歩けるようになった子がいます。この選択に伴うご家族の葛藤にも、丁寧に寄り添います。
他の病院で「もう治療法がない」と言われました。相談できますか?
もちろんです。セカンドオピニオンとして、これまでの検査データをお持ちのうえご相談ください。当院にはセカンドオピニオンでいらっしゃる方も多く、改めて評価すると、痛みのコントロールや症状緩和など、まだできることが見つかるケースもあります。
通院が難しくなってきました。往診をお願いできますか?
当院は院内での診療を基本としており、往診のみのご依頼にはお応えしておりません。ただし、長く通院していただいている子で、病状が進んで来院が難しくなった場合には、診療後の時間帯や手術のない日中などに、往診に伺うことがあります。通院が負担になってきたと感じられたら、診察の際にご相談ください。
痛みは本当に取ってあげられるのでしょうか?
当院は麻薬施用者免許を取得しており、一般的な鎮痛剤では抑えられない強い痛みに対しても、モルヒネ注射やフェンタニルパッチなどの医療用麻薬で対応できます。さらに、1回の注射で約1か月効果が続き副作用の少ない抗体医薬も導入しており、高齢の子にも使いやすい選択肢が揃っています。
費用はどのくらいかかりますか?
病状やケアの内容によって異なりますが、初回のカウンセリング時に、想定される処置と費用の見通しを事前にご説明し、ご家族が無理なく続けられるプランを一緒に考えます。ご予算のご希望も遠慮なくお伝えください。
夜中に急変したらどうすればよいですか?
診療時間外は留守番電話でメッセージを承り、確認しだい折り返しご連絡します。ただし当院の夜間対応は1人での診療となり詳しい検査は行えませんので、連絡がつかない場合や重症と思われる場合は、救急診療センターのご利用をお願いしています。救急診療センターでの治療内容は翌朝、当院に引き継がれます。ケアを始める際に、急変時の動き方をあらかじめ一緒に決めておきましょう。
まずは「相談だけ」でも構いません
ターミナルケアのご相談に、「まだ早い」も「もう遅い」もありません。診断を受けたばかりで頭が真っ白な方、他院での治療を続けながら今後の選択肢を知っておきたい方、看取りが近づき不安で眠れない方——どの段階のご相談も歓迎します。治療やケアを始めるかどうかは、お話を聞いてから決めていただいて構いません。
飼い主さまがこの時期に抱える悩みの多くは、「自分の選択がこの子のためになっているのか」という葛藤です。積極的な治療を続けるべきか、穏やかに過ごさせるべきか。ごはんを無理にでも食べさせるべきか、そっとしておくべきか。こうした問いに、たった一つの正解はありません。だからこそ当院は、医学的な見通しを正直にお伝えしたうえで、ご家族が「自分たちで選んだ」と思える決断を支えることに徹します。
21歳のロデムと暮らす私たちも、同じことで毎日迷っています。ご家族だけで重い判断を背負う必要はありません。
そして、後悔のないお別れのためにお伝えしたいのは、「残された時間の使い方」です。痛みや吐き気をきちんと取り除けば、終末期であっても、好きな場所で日向ぼっこをしたり、家族と穏やかに触れ合ったりする時間は十分につくれます。写真を撮る、好物を少しだけ味わわせてあげる、家族全員でそばにいる日をつくる。医療で苦痛を最小限にし、その分の時間と体力を思い出づくりに使っていただく。それが、私たちの願いです。
横浜市青葉区・青葉台エリアはもちろん、市外・県外からのセカンドオピニオンのご相談もお受けしています。
お問い合わせ
大切な家族の「最期の時間」を、痛みなく、穏やかに。
横浜市青葉区・青葉台エリアで犬・猫のターミナルケア・緩和ケアのご相談は、レオどうぶつ病院までお気軽にお問い合わせください。「相談だけ」のご連絡も歓迎します。
- お電話:045-960-0199
- 診療時間:9:00~12:00/15:00~19:00
- 休診日:木曜(終日)、日曜午後、祝日午後
- Web予約・LINE予約にも対応しています
- 腫瘍のご相談は予約診療で承ります。お電話にてご予約ください
- 所在地:〒227-0045 神奈川県横浜市青葉区若草台10-1 プラトゥモリ1F(「若草台」バス停前・駐車場あり)
レオどうぶつ病院





