16歳の犬が2週間前より食欲低下により動物病院受診し、腹腔内巨大腫瘤の存在を指摘された。

手術は不能とのことで光線温熱療法を希望して当院に来院された。
初診時、レントゲン検査でバリウム造影により消化管をマーキングすると、腫瘤は胃を頭背側に腸管を尾背側に圧迫して存在していた。

エコー検査ではφ11cm大の腫瘤はほぼ全周を確認できたが脾臓との連続はなく、肝臓の腫瘤が疑われた。
この1週間で腫瘤による消化管の圧迫からか食欲が廃絶していた。
光線温熱療法をご希望であったが効果が現れるまでの時間的な余裕はなく、リスクは伴うが可能性に賭けた腫瘤摘出術をお勧めした。何とか摘出が可能であった場合には圧迫が解除されQOL(生活の質)の改善が期待された。
利点、欠点を検討された結果、オーナーの希望により当院で肝臓腫瘤摘出手術を実施した。当日は獣医腫瘍外科医の林先生を招いて行った。

お腹はパンパンに張り、今にも弾けそうだ。少しの衝撃でも肝臓腫瘤の破裂の危険性があった。

開腹するとすぐに腫瘤が現れた。多数の嚢胞からなる腫瘤の破裂がすでにいくつもあり、周囲の膜組織との癒着が認められた。
癒着を慎重に剝離していくと腫瘤の基部は細くなっており、肝臓の内側左葉に連続しているのが確認できた。

腫瘤基部の正常に見える肝臓部分で結紮し離断した。
手術での大きな出血もなかったが、術後しばらくは貧血が徐々に進み、なかなか炎症も治まらなかった。

術後10日で退院し、少しずつ食欲が戻ってきた。
病理組織検査の結果は非上皮性悪性腫瘍であった。

術後2週間で抜糸をした。お腹はすっきりして食欲は戻りつつあった。
炎症も落ち着き始め、貧血も徐々に改善してきた。

術後2カ月の検診時には食欲も元気も戻り、転移を疑う所見も認めなかった。

レオどうぶつ病院