三年かけて増大した犬の乳腺腫瘍② レオどうぶつ病院腫瘍科 青葉区 桂台 桜台 榎が丘 しらとり台 つつじが丘
前回までのお話
10歳雌のミニチュアダックス。3年前に発見した乳腺部のしこりが徐々に増数増大し、左右両側の乳腺全域に9カ所のしこりが確認されました。
手術の話を聞いてから怖くなり、3年間治療をためらわれていましたが、犬の乳腺腫瘍に関して以下のような説明をいたしました。
犬の乳腺腫瘍の良悪比率は約50%であり、複数個あるしこりの半分はがんの可能性もあるということ。この3年間で進行し、大きさでいうとステージⅡであり、転移をするリスクが高まっていること。肺に転移をしてしまったら、手術で治すことは難しいこと。
飼い主さんは手術をする決心をされました。
両側の乳腺組織全域にしこりが散在していることから手術は2回に分けて、初回手術では最大のしこりを含む右側乳腺全切除とリンパ節郭清、卵巣子宮摘出術を行いました。
病理検査の結果は最大のしこりを含め、いずれも良性で乳腺腺腫、良性乳腺混合腫瘍と診断されました。
フェンタニルパッチの鎮痛効果により、手術当日の夜から食事も食べました。心配していた入院も落ち着いて過ごせ、4日後に退院しました。
その後のお話
1か月後に残存している左側乳腺全切除術とリンパ節郭清を行いました。
病理検査の結果、いくつかあるしこりのうちの一つ(矢印)が低悪性度の悪性乳腺混合腫瘍と診断されました。他はすべて良性の乳腺腫瘍でした。手術ではいずれの腫瘍も取り切れており、脈管内浸潤やリンパ節転移は確認されませんでした。
術後は前回同様にフェンタニルパッチで鎮痛を行い、術後衣のエリザベスウェアを着用することで快適に過ごせました。乳がんに対する術後補助療法も検討しましたが、経過観察することとなりました。その後、術後6か月の検診において再発や転移は認められず元気に過ごしています。
米国では犬の不妊手術の実施率が高いため乳腺腫瘍の発生率は低いようですが、わが国では雌犬に発生する悪性腫瘍の上位に入ります。
乳腺腫瘍を発見したら、増大して遠隔転移を始める前のステージで手術をすることで根治率が上がります。