犬の健康診断で見つかった脾臓の微小病変に対する細胞診 レオどうぶつ病院腫瘍科 たちばな台 桜台 みたけ台 桂台
脾臓に発生したしこりには血管肉腫という非常に悪性度の高い腫瘍が多く、しこりが破裂して腹腔内出血を起こして緊急に脾臓摘出することが多いのですが、近年の画像診断の普及により健康診断で脾臓の小さなしこりを発見することもしばしば出てきました。
画像からその病変が血管肉腫なのかどうかはわかりません。早期治療ということで小さな病変のうちに脾臓摘出するべきか悩ましい所です。脾臓は破裂など重大な問題が生じた際には丸ごと摘出可能な臓器であり、脾臓がなくなるとその機能は肝臓などが代用すると言われていますが、摘出する前にもう少し手がかりがつかめればと思っています。
健康診断により脾臓に小さな結節の見つかった犬の2症例をご紹介します。
症例1 トイ・プードル 雄(去勢)9歳
健康診断の腹部エコー検査で脾臓にφ0.7㎝の結節を認める。増大傾向を経過観察とする。
6か月後の再診時、脾臓の結節は消失。
症例2 パピヨン 雄(去勢)9歳
健康診断の腹部エコー検査で脾臓にφ0.4㎝の結節を認める。増大傾向を経過観察とする。
1か月後の再診時φ0.5㎝に増大。
8か月後の再診時φ0.7㎝に増大。
悪性腫瘍の疑いもあり、早期の脾臓摘出も検討の結果、
鎮静麻酔をかけてエコーガイド下で針吸引細胞診を行った。
外注の細胞診結果は脾臓の結節性過形成疑いであった。
良性病変の疑いであるため今後も経過観察とした。
今回、臨床症状もなく健康診断で見つかった脾臓の小さな結節の見つかった2症例に対して脾臓摘出ではない手技で対応しました。
症例1は自然消失。症例2は良性病変の疑いで経過観察中です。
最近の報告では小型犬の多い日本においては、脾臓のしこりが血管肉腫である確率は以前言われていたよりは低く、健康診断で見つかった微小病変には良性病変も含まれると考えられます。
そこで当院では脾臓に見つかった小さな病変に対しては増大傾向を観察し、増大傾向が認められる場合には、細胞診をお勧めしています。
細胞診の結果がその後の治療法選択に有用である可能性があります。
腹腔内のしこりに針を穿刺することには出血のリスクが伴います。術前に血液凝固検査を確認することが推奨されます。