グルーミングに来院したゴールデンレトリバーの男の子。
診察時に左耳の耳介の腫れに気づきました。
耳介は8cmぐらいの範囲で厚みが2cmぐらいに腫脹していました。
波動感があり、液体が貯まっていそうです。
耳血腫を疑い吸引処置を行いました。

耳介は外側の皮膚と内側の皮膚の間に耳介軟骨挟まった構造で、ぶつけたり引っ掻いたりする外的刺激により内出血をして血液が貯留することがあります。外耳炎などがある場合にはその治療をして耳の痒みを取ることが必要です。

約15ccの血液を含む貯留液を穿刺吸引しました。

ただ、実際には貯留液は血液成分をわずかに含む半透明の液体のこともあり、外的刺激による出血だけが原因ではなく、その発生に免疫などが絡んでいると予想されています。そこで、ステロイド剤を局所注入したり、内服させたりすることもあります。
インターフェロンによる治療法も報告されていますが、いずれの治療法も何度か再貯留を繰り返すことがあります。

吸引後、膨らみは消失しました。普段から興奮症で常にハァハァしていることが多いので、ステロイド療法では余計パンティングが強くなることが予想されるため、今回は非ステロイド系消炎鎮痛剤の内服を併用することとしました。

その後、数日おきに再び貯留し吸引処置を繰り返しました。
耳血腫が内科的に治まらない場合には、外科的に耳介皮膚に穴を開けて開放創とし、空所ができないように耳介皮膚と軟骨を縫い合わせる治療法も提案しました。

今回は吸引後に圧迫包帯を追加することとしました。

一週間ほどでゆるんでしまい、巻き直しを行いましたが、貯留量は減少していました。
2回目の圧迫後には貯留は無くなり耳血腫は軽快しました。

レオどうぶつ病院