脱腸が認められたチワワの鼠径ヘルニア整復
10歳齢、雌のチワワ。以前より右内股が腫脹しており、治療も兼ねて7歳時に避妊手術を行ったが腫れは引かず、最近になって急速に増大してきたと来院されました。
右鼠径部にφ9cm大の膨らみを触知し、鼠径ヘルニアを疑いました。
体重は3.1kgで少し太っています。食欲や排便もでており、明らかな消化器症状はありません。
最近になってしこりは雪だるま状に二段に増大したとのことです。
触診するとヘルニアの内容は可動性があり、拡大したヘルニア輪から出入りが可能なようです。
レントゲン検査を行うと、ヘルニア嚢内には腸管が入り込んでいるのが分かりました。
いつ腸閉塞が起こっても不思議でない状態です。
鼠径ヘルニア整復手術を行うことにしました。
膨らみの直上の皮膚を切開すると薄い袋状のヘルニア嚢内に腸管がぎっしり詰まっていました。
慎重に圧迫しながら脱出した腸管を腹腔内に押し戻しました。
腹圧がかかるとすぐに脱出しますので押さえ込みながら拡大したヘルニア輪を縫縮していきました。
腹膜、皮下組織、皮膚と慎重に縫合しましたが、腹圧がかかったときに再脱出することがあります。
手術翌日には術創部に軟性の腫脹を認めました。
術後のレントゲン検査ではヘルニアの再発は認めず、手術から2日後に退院しました。
手術から10日後の抜糸時。術創部の腫脹は消失し、ヘルニアの再発も認めませんでした。
排便も良好で、今まで小さな団子が連結した様な形状だった便が、大きな塊で出る様になったとのことです。