鼻鏡部に発生し扁平上皮癌を疑った犬の非腫瘍病変 レオどうぶつ病院 腫瘍科
犬や猫の鼻鏡部に発生する代表的な腫瘍に扁平上皮癌があります。
発生当初は色素脱や膨隆から始まり増大すると潰瘍状に自壊します。
治療は初期には積極的な外科療法が効果がありますが外貌の変化も伴います。
進行すると外科切除困難となり、自壊創からの出血などによりQOL(生活の質)が下がります。
放射線療法は緩和的効果であり、化学療法による縮小効果は望めません。
今回、鼻鏡部の扁平上皮癌を疑ったものの良性病変であり、自然消失した症例をご紹介します。
15歳の雑種犬。体重は27kgあります。高齢による前庭疾患と慢性腎臓病の経過観察中です。
2日前に普段は黒い鼻鏡部の一部が白っぽく脱色しているのに気付きました。
10日後、脱色部は徐々に増大してきました。
まずは化膿性病変の除外に抗生物質の投薬を開始しました。
抗生物質には反応せず、増大した腫瘤表面が自壊してきました。
扁平上皮癌など腫瘍も疑い細胞診を行いました。
細胞診では少数の細胞集団が採取されましたが、明らかな悪性所見は認められませんでした。
診断を進めるには大きな組織による生検が必要でした。
しかし、病変に気付いてから約1か月。しこりは縮小し始めました。
約2ヵ月後には色も元に戻りました。
オーナー曰く、草むらに鼻を突っ込んで蜂にでも刺されたのかもしれないとのことでした。
本当にそうだったのかもしれません。