病的骨折を伴う骨病変に対するビスホスホネートの効果
15歳、雌のラブラドール・レトリーバー。4ヵ月前より左後肢をかばっていました。
主治医の元でレントゲン検査にて、股関節周囲が溶けていると言われ断脚を勧められ、現在は痛み止めの内服をおこなっています。
3日前に後肢のマッサージをしていたら骨が折れるような音がして、立ち上がることができなくなったと来院しました。
レントゲン検査を行うと左大腿骨遠位(膝に近い方)にて骨折していました。
また、矢印で示す大腿骨近位(股関節に近い方)は骨溶解を認め、その周囲(左臀部)は硬く腫脹していました。
血液検査では骨病変の影響と思われるALPの上昇とCRPの上昇、軽度の貧血を認めました。
臀部の腫脹部より細胞診を行いました。骨肉腫であれば断脚をしても根治は困難であることからオーナーは痛みの緩和ケアを希望しました。
後日、細胞診の結果は異型性の強い紡錘形細胞を少数認め、発生状況などを加味すると骨肉腫などの非上皮性悪性腫瘍の可能性が疑われました。
そこで骨折による痛みの改善と骨溶解部の再化骨化を期待してビスホスホネート(ゾレドロン酸)の投与を行いました。
1回目の投与から2週間後、ビスホスホネートが著効し、痛みが改善し歩き始めました。
レントゲン検査では骨折部はズレていましたが、わずかに石灰化を認めました。
股関節の骨溶解部にもわずかに石灰化を認めました。
治療開始から7週間。3回目のビスホスホネート投与を行いました。
左大腿骨の骨折部と骨溶解部は更に石灰化が進み、太い頑丈な骨となっていました。
前回よりもスムーズに歩けるようになっていました。
左股関節直上の臀部硬結病変は縮小傾向を認めました。
今のところ肺転移を疑う所見もありません。
骨溶解と病的骨折を起こした骨病変が骨肉腫であったのかは確かではありませんが、ビスホスホネートは骨溶解病変や骨折部の骨増生と痛みの緩和には劇的な効果を示しました。今後は快適な余生を過ごせるように維持できると良いですね。