急速増大した犬の乳腺腫瘍 悪性乳腺混合腫瘍
13歳メスの雑種犬。1年前に右の第5乳腺部にφ5㎜大のしこりを認めました。最近になりφ15㎜大に急速増大をしたため手術を検討しました。
犬の乳腺腫瘍は良性の乳腺腫と悪性の乳癌との比率が半々だと言われています。外見上は良悪の判定はできませんが、増大速度が急速に増したのは悪性の所見です。このまま進行すれば転移の可能性が高まるため早急な手術を希望されました。
各種検査の結果、腫瘍は右の第5乳腺部のみに発生しており、現時点では転移の所見はありません。13歳ですが、血液検査では大きな異常は認めません。心雑音が聞こえ始めていますので今後、進行すれば麻酔リスクは上がってきます。
乳腺腫瘍は周囲の正常な乳腺組織を含めて十分なマージンを確保しました。第5乳腺部の奥に続く鼠径リンパ節も含めて摘出しました。
手術直後の腹部中央にある避妊手術の術創と右第五乳腺部の術創です。
乳腺部は大きく切除した創を寄せており、歩行時の動きも加わるので癒合不全が起こりやすい場所です。
重度の歯石がありましたので同時進行でスケーリングも行いました。
術後の病理検査結果です。
乳腺部腫瘤は低悪性度の悪性乳腺混合腫瘍と診断されました。
鼠径リンパ節には転移は認めませんでした。
子宮内には液体を貯留し、子宮水腫を認めました。
卵巣からのホルモンの分泌異常もあったのかもしれません。
術後2週の抜糸時です。術創はきれいに癒合していました。
乳腺腫瘍の進行度はT1N0M0のステージ1。
完全切除できたため、術後の抗がん剤治療は行わず、経過を観察することとしました。