治療困難な犬の膀胱癌にラパチニブ(タイケルブ錠)の治療を開始しました
分子標的薬ラパチニブ(タイケルブ錠)の治療を開始しました。
ラパチニブは人ではHER2過剰発現が確認される乳癌の患者に使用されます。
犬の尿路上皮癌の約60%でHER2蛋白の過剰発現が認められており、治療困難である膀胱移行上皮癌や前立腺がんなどへの効果が期待されます。
2022年の東京大学の論文では、腫瘍の無進行を含めて89%の症例に反応が認められ、非常に良好な結果が報告されました。
膀胱移行上皮癌は膀胱の中でも「膀胱三角部」と呼ばれる尿道に続く部位に好発するため、外科切除困難な腫瘍です。膀胱の頭側に発生した腫瘍の場合は膀胱部分切除が可能ですが、浸潤性の高い腫瘍であるために、かなり広範囲に切除しても必ず再発が起こります。そのため、外科手術に術後の化学療法(抗がん剤治療)を合わせることが推奨されています。
しかし膀胱移行上皮癌に対する既存の抗がん剤単独の治療効果はあまり良くありませんが、各種抗がん剤にピロキシカムを併用すると効果が上がります。
ピロキシカムは非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)であり、抗がん剤ではありませんが、膀胱移行上皮癌を始めとするいくつかの腫瘍に対しては抗がん剤と同等以上の効果が得られています。
最近になりピロキシカムは販売が終了となり、当院では犬用のNSAIDsであるフィロコキシブを代用しています。
当院では治療困難な犬の尿路上皮癌(膀胱移行上皮癌や前立腺癌など)に対する、ラパチニブ(タイケルブ錠)とNSAIDs(フィロコキシブ)による治療を開始しました。
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