血液検査で肝臓の数値が上昇した場合、レントゲンやエコーなど画像検査で肝臓に変化がないか確認しますが、画像上は明らかな異常を認めないことがあります。甲状腺機能低下症などの基礎疾患も認めず、利胆剤や肝保護剤などお薬の投与でも改善しなかった2例を紹介します。

症例① ジャックラッセルテリア 10歳齢 雄。

健康診断に来院し、血液検査にて肝臓パネルの軽度上昇を認めました。
元気や食欲もあり一般状態は良好です。
一年後の健診では、徐々に肝臓の数値は上昇してきました。
X線検査では肝臓の軽度腫大を認めました。

超音波検査では胆嚢内にわずかな胆泥を認めるものの、肝実質には明らかな異常は認めませんでした。

その後、肝臓のサプリメントや食事療法を行い、半年後に再検査を行いました。
肝臓のパネルは更に上昇し、アルブミンの低下から肝機能の低下も予測されたため、2次診療施設を受診し腹腔鏡下での肝生検を行い、病理組織検査により胆管肝炎と診断されました。
ステロイド剤、利胆剤の治療を開始し、肝臓のパネルは徐々に改善しました。

治療開始から4ヶ月現在、ステロイド剤を漸減しながらも経過は良好です。

症例② 柴犬 10歳齢 雄。

元気、食欲の低下で来院し、血液検査にて肝臓パネルの異常値を認めました。
X線検査では肝臓の軽度腫大を認めました。

超音波検査では胆嚢壁の肥厚を認め、胆嚢炎を疑いました。

食欲低下のため、自宅での薬の服用は困難であり、通院と自宅での皮下点滴治療を開始しました。
その後も食欲はなく、肝臓のパネルも上昇傾向であったため、2次診療施設を受診し腹腔鏡下での肝生検を行い、病理組織検査により胆管肝炎と診断されました。
ステロイド剤、利胆剤の治療には反応せず、肝臓のパネルは更に上昇したため免疫抑制剤の追加投与を開始しました。
その後、食欲は改善し、肝臓のパネルも改善傾向となりましたが、下痢が続きました。
ステロイド剤と免疫抑制剤を徐々に減らしながらも少しずつ肝臓の数値は下がってきました。

治療開始から4ヶ月。下痢も改善して減少していた体重も戻りました。以前の様にドライフードも食べる様になりました。
血液検査の肝臓パネルも改善傾向で、ステロイドを休薬し免疫抑制剤も減薬中です。

一般にステロイドを投与すると肝臓の値は上がりますので、肝臓の病気にステロイドをすぐに使うことはありません。
しかしながら肝臓の病態が免疫の絡んだ炎症だった場合には、ステロイドの投与で改善してくることがあります。
免疫の絡んだ疾患の場合はステロイドや免疫抑制剤を使った長期の治療となることが多いので、リスクを伴いますが、肝生検により確定診断がつけると治療方針が立てやすくなります。

レオどうぶつ病院