高齢の犬が頻繁に吐き、足腰も弱くなってきました。
吐く症状をよく聞くと、嘔吐ではなく吐出のようです。
嘔吐は胃まで入った食塊をオエーッと吐き出しますが、吐出は胃に入る前の食道内の食塊がケポッと出るイメージです。

重症筋無力症では全身の筋肉に力が入りにくくなる病気です。食道の筋肉も伸びきってしまう(巨大食道症)ため、食べたものが胃まで運ばれずに食道内に残ってしまうのです。食道内の食塊が何かの拍子に口から出てしまうのが吐出です。寝たきりの動物が横になったまま吐出をすると、吐物を吸い込んでしまい高率に誤嚥性肺炎を起こします。誤嚥性肺炎は死亡率の高い怖い病気です。
下のレントゲン写真は左が巨大食道症。右は正常な写真です。レントゲンでは空気が黒く写りますが、左の写真では気管の背側(上)にも空気の貯留が認められます。これが拡張した食道です。右の正常な食道はレントゲンに写ってきません。


肺の写真を見比べても、巨大食道症の犬では拡張した食道のラインが確認されました。

治療は神経筋伝達を促す薬の他に、ご家庭での食後のケアが重要となります。
食後に起立位にして、重力により食べたものが胃まで落ちていくようにするのです。
小型犬であれば食後しばらくの間、赤ちゃんのように縦に抱っこして背中をポンポンと叩くと良いでしょう。
毎日やられている飼い主さんは、うまく流れるとゴボゴボっと音がするとおっしゃっていました。
大型犬を抱っこし続けるのは大変な作業だと思います。
そんな巨大食道症のワンちゃんのために作られたベイリーチェアという椅子があります。
犬を縦に補助して座らせながら食事をさせる椅子です。
巨大食道症のケアで困っていたらベイリーチェアで検索してみると良いかと思います。

レオどうぶつ病院