小型犬で興奮時に咳が出たり、飲水時によくむせる。もしかすると気管虚脱かもしれません。
まずは各種検査にて心臓病や気管支炎・肺炎などの咳を伴う他の疾患を除外します。
小型犬に多い心臓病の僧帽弁閉鎖不全症では聴診にて心雑音を認めます。レントゲン検査をすると、心拡大を認めることがあります。
肺水腫を起こすと肺が白く映ります。また、肺炎を起こした場合にも肺は白く映ります。

下は正常な犬の胸部レントゲン写真です。心臓の大きさは正常で、肺もきれいに見えています。
青く縁取ったのは気管です。気管は喉から肺までをつなぐ管で、色々な方向に首を曲げても潰れないようになっています。

気管虚脱では気管軟骨が弱くなることで気管が潰れて狭くなり、咳が出たり呼吸困難になる病態です。
気管虚脱が起こる要因には年齢の他に肥満、首への圧迫刺激、興奮などが挙げられます。

症例1は12歳メスのポメラニアン。抱き上げる時や寝起き時、首への刺激で咳が出ると来院しました。
レントゲン検査では重度の気管虚脱を認めました。

週に1回のカルトロフェン注射を始めると、1回目の注射後より咳は軽減しました。
4回目の注射後には、たまに咳が出る程度に落ち着きました。

症例2は15歳オスのチワワ。寝起きや首をひねった際に咳が出ると来院しました。
レントゲン検査では重度の気管虚脱を認めました。

週に1回のカルトロフェン注射を開始。3回目の注射後より咳が軽減した。
希望により6回目の注射を行ったが咳は出にくくなってきている。

気管虚脱に対する外科的な治療を行う専門施設もありますが、一般的には内科療法で対処します。
カルトロフェン注は関節炎に対する治療の注射ですが、軟骨の再生を促す効果を利用して気管虚脱の治療に効能外使用します。
使い方は関節炎の治療に準じて、週に1回、1か月かけて4回注射します。
咳がひどい場合には気管支拡張剤や去痰剤なども使用します。
夜間に咳が止まらずに眠れないような場合には、頓服の咳止めも使用します。
多くの症例で2~3回目の注射あたりから、咳の軽減が認められます。
4回目の注射以降は関節のサプリメントなどを使用しながら経過を観察します。
再び咳が気になるようになったら、注射の再開を検討します。

レオどうぶつ病院