10歳齢、雌のウェルシュ・コーギー。2年前より歯周炎があり、デンタルガムや口腔のサプリメントを使用しています。1年半前に歯周病が悪化して、麻酔下でのスケーリングと動揺歯の抜歯を行いました。その後、しばらく落ち着いていたものの、1年前より口周りを触ると怒るようになりました。

左下顎第4前臼歯抜歯外側の歯肉に炎症が認められ、抗生物質や口腔のサプリメントなどを与えていましたが徐々に進行し潰瘍病変を形成しました。
潰瘍病変は徐々に増大し腫瘤形成をしたため、口腔内悪性腫瘍も疑い切除手術を計画しました。
術前検査では肺転移や明らかな骨溶解は認めず、まずは切開生検を行いました。

病理組織検査の結果はセメント質形成性エプリスと診断されました。これは慢性炎症を原因に発生したことが予想され、腫瘤底部の臼歯に歯根端膿瘍が存在することを疑いました。
後日改めて手術を行いました。
まずは、エプリス底部の右下顎第4前臼歯抜歯をしました。

次に表層のエプリス本体を切除しました。腫瘤底部の歯槽骨を掻爬して、歯根端膿瘍部の洗浄を行いました。

最後に腫瘤切除による歯肉欠損部の口唇粘膜フラップ形成術を行いました。

病理組織検査の結果はセメント質形成性エプリスと歯根部に慢性炎症の所見が認められました。
術後は徐々に痛みが和らぎ、口を触らせるようになりました。
今では以前のようにボールを咥えたりしています。

4歳齢、雄のラブラドール・レトリーバー。1週間前に歯磨きの際に歯肉のしこりに気づいて来院しました。

腫瘤はφ11×11×5mmで、左上顎第3前臼歯外側の歯肉から発生しています。歯周炎もなく歯はキレイです。
木の枝や布製のおもちゃなどを良くかじっており、左下顎の犬歯先端は破砕しており、歯肉腫瘤と接触している部位は一部自壊しています。
切除生検をお勧めしましたが、臨床症状はなく、いったん経過を観察することになりました。

3ヶ月後、しこりはφ1.4×1.4×0.6mmに増大し、手術をすることになりました。

口腔腫瘍の可能性がありますのが、術前検査では明らかな転移所見や局所の骨浸潤ははありません。
そこで悪性ならばT1N0M0ステージⅠの口腔腫瘍として外科切除を計画しました。

しこりの底部の歯に動揺所見はなく温存し、肉眼上正常な歯肉部にて切除し、歯肉欠損部に口唇粘膜フラップ形成術を行いました。
術後はエリザベスカラーを装着し、しばらくはふやかしたフードを与えることとしました。

病理検査の結果は骨形成性エプリスと診断されました。
術後、エリザベスカラーを外している時にこすったのか、歯肉縫合部は離解しましたが、再生してきた歯肉で置換されました。

レオどうぶつ病院