基礎疾患を抱えた犬の形質細胞腫に対する無麻酔での結紮処置
16歳のジャックラッセルテリアの額にしこりができました。体には同様のイボがいくつも認められます。
 このワンちゃんは副腎皮質機能低下症(アジソン)、甲状腺機能低下症、皮膚肥満細胞腫、慢性腎不全などいくつもの病気の療養中であるために経過観察をしていましたが、額のしこりは徐々に増大しました。本人も気にして引っ掻いて出血するようになり、まずは細胞診を行うこととしました。
 細胞診では透明度の高い細胞質を豊富に含む円形細胞を多数採取し、腫瘍性病変を疑いました。
 病理診断医により形質細胞腫の可能性が疑われました。
 形質細胞腫は良性の腫瘍ですが、徐々に増大し今後更にQOLを落とすことが予想されました。
 しかし、全身麻酔などのストレスをきっかけにホルモンのバランスが崩れたり、腎不全が悪化することが予想されます。
 しこりの形状は基部にくびれのある有茎状であったために、局所麻酔による結紮処置を行うこととしました。
 
 腫瘤基部の周囲に局所麻酔剤を極細針にて分注し局所麻酔をして、
 
 外科用結紮糸にてしこり基部のくびれた部分を結紮。
 これによりしこりへの血流が遮断され、うまくいくと1-2週間でしこりは脱落します。
 同時に左前肢の手首にあったイボも結紮しました。
 
 2週間後の来院時にはしこりは脱落しており、付け根の部分がかさぶたになっていました。
 
 手根部のイボは基部が太く、わずかなくびれしかありませんでしたが、うまく取れたようです。
 
 結紮処置から1か月が経ち、しこりのあった部分に発毛し、分かりにくくなりました。
 全身麻酔をかけずに処置ができたので体調を崩すこともなく、療養中です。
結紮処置では外科切除と違い基部の細胞が残るため再発のリスクがあり、通常は腫瘍病変には適応となりません。
 しかし今後、再発してくるとしても、かなりの時間稼ぎになりQOLを改善することができました。
 色々な理由で麻酔がかけられなかったり、手術ができない場合に結紮処置はひとつの選択肢になりえると考えられます。
 レオどうぶつ病院
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