13歳齢、雌のチワワが子宮蓄膿症の疑いで緊急来院しました。
一昨日より急速に状態が悪化し、昨日他院を受診して子宮蓄膿症の疑いを診断され、そちらでは手術の対応ができないとのことで、緊急の手術を希望され当院を受診しました。

エコー検査を行うと腹腔内には大量に液体が貯留し、腹水の貯留を思わせるような所見でした。レントゲン検査では腹腔内は広範囲にすりガラス用の陰影を示しましたが、腸管等の腹腔臓器が左側に押しやられている所見から、右側腹腔を中心に大量に貯留した子宮蓄膿症を疑いました。

画像上は過去に経験したことのないような大量の貯留であるため、以下の説明をしました。

・子宮蓄膿症ではない可能性もあること。
・子宮蓄膿症であた場合は、子宮破裂により既に腹腔内に膿汁が貯留して腹膜炎を起こしている可能性があること。
・その場合は蓄膿子宮を摘出できたとしても、腹膜炎により命を落とす可能性が高いこと。
・子宮蓄膿症であった場合、病気の改善を目指す場合には可能性に賭けた外科手術しかないこと。
・手術はせずに、最期の時間をご家族で自宅で過ごすことも選択肢であること。

オーナー様は電話でご家族と相談の上、可能性に賭けた手術をご希望されました。


術前、お腹はパンパンに張っており、外陰部からは膿の排出を認めました。
腹腔内に膿が貯留していた場合には腹腔洗浄をすることも想定しながら開腹すると、すぐに液体を貯留した子宮を疑う臓器が現れました。

あまりにも大きく、引き出すことができないため切開創を拡げ、慎重に少しづつ引き出すことができました。大量に液体貯留した子宮は基部で捻転しており、完全閉塞により急速に貯留が膿が貯留し病態が進行した事が予想されました。
手術動画はこちら↓
http://www.leo-ah.jp/blog/2017/06/post-228-1392942.html


右側の子宮と比べると、基部で捻転していた左の子宮には大量に液体貯留していることがわかります。摘出した蓄膿子宮の重さは700gであり、術前に2100gあった体重が術後には1400gとなったことから、実に体重の半分の重さの膿が貯まっていたことが分かりました。
貯留していた膿の培養検査では大腸菌が大量に検出されました。

術後、ぺったんこになったお腹。幸い子宮破裂もなく、腹腔洗浄もせずに済みました。
術前にはふっくらした体に見えていましたが、実はかなり痩せていました。
術前より重度の貧血があり元気が出ませんでしたが、献血の協力犬が見つかり輸血をしたことで食欲が戻り退院できました。

今日は抜糸に来院。食欲も旺盛で元気になりました。

レオどうぶつ病院