高齢猫の尾に発生した腫瘍の治療 悪性神経鞘腫
ナナちゃんは18歳になる避妊済みの雌猫です。
尾がただれて出血しているのに気づき来院しました。
尾の中央背側面に2㎝大の軟らかいしこりを認めました。しこりの表面は自壊し、膿を排出していました。しこりの細胞診を行うと炎症細胞を背景にして多数の腫瘍細胞が採取されました。
高齢であることから、まずは持続性の抗生物質の注射を行い、崩れたしこりの部分は包帯を巻き、定期的に交換を行いました。
2週間後、本人は尾を気にする様子もなく、食欲もあり調子も良さそうでしたがしこりは3㎝に増大していました。
血液検査を行うと軽度の慢性腎臓病以外は異常を認めませんでした。18歳ではありますが、まだまだ元気であること、しこりは今後さらなる増大が予想され、転移をすれば命に関わる可能性もあることから外科切除を検討しました。
術前のレントゲン検査では肺や腰窩リンパ節群への転移は認めませんでした。
しこりは長い尾の中腹にありましたので、しこりから少し離れた健康な部分での断尾手術を行うこととしました。
手術は大きな出血もなく、腫瘍の完全切除をすることができました。痛み止めのフェンタニルパッチを使用したことで、術後は傷を気にすることはありませんでしたが、食欲がなかなか戻りません。術後の血液検査を行いましたが腎臓病の悪化などの異常は認めませんでした。
術後3日目にフェンタニルパッチを除去して、食欲増進効果のあるミラタズ軟膏を処方しました。ミラタズ軟膏を1日1回耳に塗布すると、食べ始めました。
病理組織検査の結果は悪性神経鞘腫と診断されました。
悪性神経鞘腫は転移率は低いものの局所再発率が高い、軟部組織肉腫のひとつです。何度も再発の手術をしないためには拡大切除が必要です。今回は腫瘍から離れた場所での切除が行えたため、根治の可能性が高いと言えます。術後の抗がん剤治療は行わず、経過観察中です。